新潟と長野の県境に津南という町がある。ここは新潟県の南部に位置し、昔から豪雪地帯で有名。戦後にも、7メートルの積雪があったと記録されているほどの地域だ。そのすぐ隣に長野県栄村がある。先日、この村の積雪が3メートル前後になって、住民が脱出を余儀なくされたとの報をラジオで聞いた。一瞬、そうであろうな!と私も同じ思いに駆られた。ふと、鈴木牧之の『北越雪譜』や『秋山記行』を想起したからである。
今でこそ、かの地は“栄村(下水内郡)”と呼ばれているが、かつては積雪期になると「陸の孤島」と呼ばれた有名な“秋山郷”である。しかし今日、無雪期の同地こそ、日本の原風景を彷彿とさせる“理想郷”の趣が偲ばれ、おそらく誰人も“久恋の地”となろう。郷は、東に苗場山、西には切り立った岩肌を見せる鳥甲山に挟まれ、真ん中を中津川の清流が走っている。
私たち夫婦は、この地を二度訪れたことがある。が、いずれも無雪期であったから、極寒の秋山郷は知らない。“牧之の館”や村の資料館の見学。赤沢、和山、切明といった集落に湧くそれぞれ泉質の異なる温泉をゆったりと堪能させていただいた。ゆえに、かの『秋山記行』は、遠く偲ぶに過ぎなかったことになる。当時は、津南から日に4便のバスが出ていたと記憶するが、あの中越地震で大きな打撃を受けた同郷ゆえ、その後の消息は不明である。
いつか、今度は雪の降る冬、栄村・秋山郷を訪ねてみたい。津軽は、同じ雪国であっても、“陸の孤島”になる季節はない。雪国の本当の苦労は、その地に住んでみて初めてわかるもの。今冬の津軽が、如実にそれを教えてくれた。今宵もまた、駸々と雪が降り続いている。明日もまた、二人で元気に雪かきに励みたい。豪雪の“秋山郷”に思いを馳せて、である。ではまた!

